誰にもいえない過去があった
なんでも読書 ◆◇◆◆
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2007.11.27
Vol.2434
『いつか陽のあたる場所で』
乃南 アサ(のなみ あさ)
出版:新潮社 2007年
定価:1575円(税込)
ISBN978-4-10-371008-0
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著者の新シリーズ。連作短篇集。過去のある女性二人
が生きていく日々を描くという体裁。「過去」とは、
罪を犯して刑務所に入っていたというもの。それぞれ、
殺人犯に窃盗犯。五年から七年過ごして、社会復帰し
てみれば、浦島太郎みたいな状態で、手に職はなく、
いったいどう生きたらいいのか。となると、少々重た
そうな雰囲気ですが、小説は明るいタッチで、読みや
すい。
芭子と綾香。谷中で新しい生活を始めた二人には、誰
にもいえない過去があった。いつの日か胸を張って堂
々と生きていける日が来ることを信じ、前向きに生き
ている。
綾香が好きな人を見つけたと言う。谷中銀座の魚屋だ
とか。聞いてみるとずいぶん年下らしい。芭子は、そ
んな風にけろりとした綾香がなんだかうらやましい。
資格もないので、アルバイトで治療院の受付を始めた。
綾香はパン職人になろうと、修行中・・・・・
「同じ釜の飯」
二人で動物園に行った帰り、近所で泥棒が入ったとこ
ろに出くわした。ひょんなことから、警察官と知り合
ったものの、芭子はあまり近づきたいとは思わない。
ところがその警官はなぜか芭子に関心を持ち・・・・
「ここで会ったが」
私はこの小説の舞台になっている谷中に一時住んでい
たことがありまして、なんとなく親しみが湧きました。
谷中銀座もしょっちゅう歩いていたもの。住むなら、
こんなところがいいなとその頃も思っていました。東
京でも下町らしさが残っている地域なのですね。ただ
し、何かと世話を焼く人たちがいるというのは、二人
にとってはありがた迷惑という面もあるのです。
前科のある主人公がどう生きていくか。意外にも小説
は淡々とした日常がつづられていくだけで、深刻な場
面には当たりません。さらに芭子の実家は裕福なよう
で、経済的には恵まれているという設定なのも、深刻
さを軽くしている。
『あんた、こんな美味しい肉じゃがが出るようなムシ
ョだったら』
『私らはまだ、よかったよ。同じ鉄格子の暮らしでも、
べつに見世物には』
「それにしても、どうして『なしわり』などという言
葉が出てきたのだろう」
『こんな生活してたんじゃ、あそこにいた頃とまるっ
きり変わらないじゃん』
文中、芭子がパソコンに始めて触るシーンがあり、ネ
ットも知らないという、まさに「浦島太郎」状態であ
ることがばれます。七年も別世界にいれば、パソコン
とは無縁になるのですね。当たり前ですが。
事件らしき事件はほとんど起こりません。その意味で
は退屈な読み物。会話中心だし、展開も女性の日記み
たいなもので、どうも私の趣味には合いません。せっ
かく面白そうな設定なのに、今後も続けるのなら、も
うちょい、スリリングな展開はできないものでしょう
か。スリリングと言ったら小説中の二人には申し訳な
いが、人情ドラマにもなっていない中途半端な小説。
1時間25分
留守番をさせてみたら泣いている犬
評価 ★★

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